寄稿 | 岐阜薬科大学同窓会

会報九重(ここのえ)

寄稿

  • 「若い薬学生に期待するもの:使命感と責任感の醸成」
    (独)医薬品医療機器総合機構 森 本 和 滋(大18)

1. はじめに
昨年、 東京東北鳳川会の同窓会誌に、 米国のルーサーライス大学 (LRU) より D.Min (実践神学博士) 学位を授与されたストーリーを紹介させて頂いた1)。 ポストドクの活動の一つとして昨年に続き2)、 日本薬史学会に、 今年2月 「使命感と責任感の醸成」 に関する論文を纏めて投稿し、 幸いにも採択され、 6月25日に刊行された3)。
大学院時代からの友人・岸田修一氏 (大20) に話したところ、 「出来れば要旨でも九重に載せて欲しいです」 とのアドバイスを頂き、 勝野学長のお世話で紹介記事寄稿の運びとなった。

2. 薬史学雑誌・英文要旨の和訳
新制薬系大学における薬学倫理教育の歩みを使命感と責任感の醸成の視点から調べた。 戦後四十余年間は、 我が国の倫理教育は、 各大学の独自性に委ねられて来たように推察された。 しかし、 1992年の医療法の一部改正公布は、 薬剤師の役割に大きな変化をもたらし、 1997年薬剤師倫理規定も30年振りに改定された。 同年 FIP は、 国際薬剤師倫理規定を採択した。 2002年薬学教育モデル・コアカリキュラムが完成した。 2006年、 6年制の薬学教育が開始され、 第1期生が今春卒業を迎えた。
薬学生のための使命感と責任感の醸成のための実務教材について筆者も開発し、 その有効性をフィージビリティスタディで検証した。 また、 これからの薬学倫理教育の在り方についても提唱した。
なお、 本論文には、 「建学の精神と教育理念」 のタイトルで倫理教育に関連したと思われる言葉を探り出し、 31大学の言葉を表6に列記した。 母校の 「強く、 正しく、 明朗に」 も入っている。

3. 薬学教育の中で、 どうしたら使命感と責任感を醸成できるだろうか?
2009年から2年間、 母校と名城大学の1年生を対象に 「薬学入門 (ヒューマニズム):若い薬学生に期待するもの:学びへの情熱、 使命感と責任感の醸成」 の90分間の講義をさせて頂いた具体的なやり方も、 論文の 「5. 方法の部」 で紹介した。
教材としては、 誓いの碑、 ソリブジン事件、 特定フィブリノゲン製剤、 石館守三博士、 フランシス・ケルシー博士、 コフィ・アナン元国連事務総長、 レギュラトリーサイエンス、 サーバントリーダーシップ等を挙げた。 そして、 感銘を与える偉人の生き方、 概念や理念から学ぶことの大切さについて解説した。

4. 薬学入門 (ヒューマニズム) 講義のケーススタディ
論文の 「表8」 には、 二つの大学での講義後、 合計 495 名の学生達から、 葉書一枚のスペースに、 ①講義の感想、 ②講義の中で印象に残ったヒト、 ③自分の夢を宿題2として提出してもらったフィージビリティスタディ結果を、 講義反響ベスト5として提示した。
結果は、 ケルシー博士の勇気に感動を覚えた学生が特に多かった。 アナン元国連事務総長の抗エイズ薬政策や石館守三博士の言葉に感銘を受けた学生もいた。
また、 講師自らの社会人としての40年間の様々な実体験、 中でも25年間の研究職から50歳で PMDEC への専門行政職への転身、 国際公務員の15年間温めた夢実現のストーリーにも興味を示してくれた。 後輩達の優しい・素直な心の反応として嬉しく受け取らせて頂いた。

5. おわりに
5月3日、 京大付属院第一臨床講堂で全国の医療系学生の集まりである I.Z.M. 春季総会で 「若い学生に期待するもの:使命感と責任感の醸成」 のタイトルでの講演させて頂く機会を得た。 昨年1月、 母が89歳で逝去し、 長年の願いであった京大医学部に献体手続きをさせて頂いたことが縁で、 特別講演をさせて頂いた。 約1時間の話を終えて、 弘前、 群馬、 東京、 三重、 京都、 香川等から参加した学生達から、 素直な質問や自らのチャレンジ、 これからの夢を伺うことが出来た。 (写真)
このような感激も、 2年前、 勝野学長のご配慮で、 1年生を対象とした薬学概論の特別講義を三田洞キャンパスでさせて頂いたことの延長線上での出来事であった。
今年は、 7月9日母校・新キャンパス・第二講義室で、 百六十余名余の新入生を対象に講義させて頂いた。 真剣な眼差しで聞いてくれ、 折々にスライドの言葉を学生達にマイクロフォンを近づけて読んでもらうと、 彼らは快く引き受けてくれた。 また、 講義前に課した宿題1・ソリブジンのデンマークの論文のアブストラクトの和訳 (Cancer Res. 46, 1094, (1986)) も3名の学生が講壇で、 見事にプレゼンしてくれた。 彼らの出身地は、 滋賀、 横浜、 長崎、 広島、 大阪、 茨城、 鹿児島、 岐阜…まさに全国区、 彼らの素直さ、 積極性がとっても嬉しかった。 将来母校の希望の灯となって活躍してくれることを夢見ながら、 黒野のキャンパスを後にした。

参考資料
1. 森本和滋:ルーサーライス大学から D.Min学位授与、 鳳川ジャーナル2011年7月、 pp.18-19、 東京東北鳳川会 (2011).
2. 森本和滋、 藤原康弘、 川原章:医薬品医療機器審査センター (PMDEC) から医薬品医療機器総合機構 (PMDA) への15年の歩み:設立初期を振り返って、 薬史学雑誌, 46,3850 (2011).
3. 森本和滋:使命感と責任感との醸成の視点からみた新制薬系大学における薬学倫理教育の歩みとこれから、 薬史学雑誌, 47,3143 (2012).

 

 

  • ―同窓生、 学生の皆さんへ自信を持って推薦する1冊―
    新刊書 『激動する日本の医療と医薬』 の紹介
    岐阜薬科大学名誉教授 片 岡  貞(大13)

最近、 標記タイトルの書が神原秋男氏 (大学7回卒) によって執筆され、 出版された (日本評論社、 本体2400円)。 前書きには、 『医薬情報誌 「国際医薬品情報」 に10年余にわたり連載されている医療、 薬事関連の新刊紹介 「新刊書を読む」 から 152 編を選定し、 編纂したもの』 と記されている。いわゆる書評を集めた本とは?イメージが湧かないままに数冊分十数ページを読んで、 出版社がこの本の出版を企画した理由が納得できた。 読んでいて面白い。 神原氏は第一製薬で医薬開発や医薬マーケッティング事業を担当されていた実績の上に、 その後も医薬情報誌に論文、記事を投稿しながら薬事評
論活動を続けておられる。 膨大な読書量と集積されている情報によって培われた知識が文章に溢れている。
取り上げられている書籍は、 最近10年間に出版された医療制度、 医薬品産業、 生命科学と新薬創製などに関する新書本から研究者が読むような大作まで幅広い。
紹介されている本1冊分が見開き2ページに紹介されていることも、 いいアイデアと思う。 まず、 タイトルから受けるイメージ、 関連する話題などその書籍を選んだ背景が述べられ、 続く 『概要』 で書籍に書かれている内容が簡潔に記され、 『読み終えて』 で取り上げられている話題に対する著者の率直な意見、 見方などが明快に記述されている。 著者の持ち味が十分に出ている核心部分である。 また、 本学の故吉田甚吉先生や生薬学のS教授(故嶋野先生)などの名前がでているのも懐かしい。
この本を読めば日本における医療制度、 医薬品産業、 創薬研究などの現在の課題と問題点を把握することができるとともに、 流れの概略を知ることができ、 医療、 薬事に従事する皆さんはきっと今後の方向性、 注目すべき点が何かを見つけられるのではないかと思う。
氾濫する情報の中で適切な本を選ぶことは容易ではない。 この本はそのようなときに大変有益な書物となるであろう。 学生諸君のレポートを書くための参考書選びにも、 大いに役立つと確信する。 皆様に是非読んでいただきたく、 ここに紹介いたします。

 

 

  • 製剤の達人
    ファイザー(株)神 谷 明 良(大21)

近年、 多くの産業で技術の伝承が必要だと言われていますが、 製剤技術の分野でもその重要性が取り上げられ、 日本薬剤学会では数年前から、 製剤技術の発展や伝承に貢献した者を 「製剤の達人」 として表彰しています。
去る5月末、 日本薬剤学会年次総会が神戸国際会議場で開かれ、 小生も 「製剤の達人」 の称号を頂きました。 直接の受章の理由は、 当学会が主催しています 「製剤技術伝承講習会」 の講師を務めたことから、 受賞の栄に浴することができました。 これまでに60余名の方が受賞されておりますが、 その中に同窓生であります小冨 (旧姓、 飯沼) 正昭さん (大20回卒、 大塚製薬㈱) がおられました。
新薬の承認が極めて難しいなかで、 既承認薬の剤型追加や、 口腔内崩壊錠などの新規剤型開発、 さらにニュージェネリックと呼ばれる臨床で使いやすい後発医薬品の開発が目覚しい中、 製剤技術の重要性がますます注目されていると思われます。
添付の写真は、 去る5月25日、 日本薬剤学会第27年回総会 (神戸国際会議場) で、 学会長の原島秀吉北海道大学教授から表彰の盾を頂戴した時のものです。

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