新任の御挨拶 名誉会長 | 岐阜薬科大学同窓会

会報九重(ここのえ)

新任の御挨拶 名誉会長

岐阜薬科大学長 勝 野 眞 吾

katsuno

 岐阜薬科大学同窓生の皆様には、 益々御健勝に御活躍のこととお慶び申し上げます。 日頃より教育研究基金、 新学舎建設募金に多大なる御協力をいただき、 大学を代表して厚く御礼申し上げます。 同窓生の皆様のかわらぬ物心両面での厚い御支援は、 創立76周年を迎える岐阜薬科大学の最も大きな財産であります。 心より感謝申し上げます。
 さて、 私はこの度、 母校岐阜薬科大学の第10代学長を拝命し、 4月1日より仕事を始めました。学長就任にあたって、 新任のご挨拶を申し上げます。
 私は第15回の卒業です。 卒業後は他の大学で勤めてきましたので、 岐阜薬科大学には42年ぶりに戻りました。 赴任後数ヶ月ですが、 改めて岐阜薬科大学の良さを噛みしめるとともに責任の重さに身の引き締まる思いでおります。
 私は岐阜薬科大学の特徴を、 以下の5点に集約できると考えています。
単科の薬科大学であり、 明確な目標・ミッションをもつ。
高い研究能力のある教員集団をもつ。
質の高い学生・院生がいる。
明るい校風が培われている。  
同窓会の強い支援のもと、 良い伝統が引き継がれている。
 今、 我が国では大学の存在意義が問われ、 その役割・機能分化の明示が求められています。 岐阜薬科大学は単科の薬科大学であり、 薬学分野における基礎及び応用研究の推進 (薬学研究拠点形成)、 薬剤師、 医薬品研究者・技術者、 健康・環境科学研究者・技術者等の育成 (高度専門職業人養成) という明確な目標・ミッションを持ちます。 また社会貢献の面でも、 岐阜という地域に根ざしながら全国的、 国際的な存在感があります。 少人数でありながら、 極めて高い研究能力・研究実績のある研究者集団で教員組織が形成されている点が、 岐阜薬科大学の最も大きな特徴であり、 利点です。
 質の高い学生を抱えることも岐阜薬科大学の大きな特徴です。 レベルの高い学生が岐阜薬科大学というローカルな大学に全国から集まっているというのは、 奇跡と言っても良いと思います。 これらの学生が、 岐阜にありながら各地域からの息吹をキャンパス内に反映させます。 レベルの高い学生をもつことは、 また教員のモチベーションを高めます。
 岐阜薬科大学がもつ明るい校風は、 とても大きな財産です。 「強く、 正しく、 明朗に」 のモットーは、 私が学生の時でも何か小学校のようだと感じていましたので、 今の時代ではとても古臭い感じかもしれません。 しかし、 私自身が年齢とキャリアを重ねてきてみると、 このモットーには大きな知恵が秘められていることをあらためて感じます。 全国から岐阜薬科大学に集まってくるレベルの高い学生のかなりの部分は、 必ずしも本学を第一志望とした学生ではないのが現実です。 しかし、 第一志望であるかどうかを問わず、 ほとんどすべてが岐阜薬科大学で生き生きと勉学し、 クラブ活動にエネルギーを注ぎ、 その力量を発揮します。 岐阜薬科大学がローカルな位置にあり、 良い環境にあることも一因ですが、 何よりこの大学全体にある明るい雰囲気、 変に深刻ぶらない雰囲気が大きな要因と思います。 10代後半から20代前半をどのような環境で過ごすかは、 その人が可能性を開くためのキーになるもののように思います。
 そして、 何よりも岐阜薬科大学の長い、 良き伝統とそれを培ってきた同窓会、 同窓会との連携を運営に活かしてきた大学の在り方は、 岐阜薬科大学の大きな財産と考えています。 私自身は、 岐阜薬科大学や薬学分野と離れた分野で仕事をしてきましたが、 思わぬところで、 思わぬ形で岐阜薬科大学の同窓の方々に出会いました。 素晴らしい能力をもっておられる方、 人間として尊敬できる方に多く出会いました。 著名な方もありますが、 無名でも誠実に良いお仕事をされている方に多く出会いました。 それらの方たちが岐阜薬科大学の出身であったことを知った時の喜びは言葉で表すことができないほどでした。 脈々とした岐阜薬科大学の伝統の力を感じています。
 このような長い良き伝統に培われた岐阜薬科大学の特徴を活かし、 これまでの実績を基盤にして大学づくりを進めたいと考えています。
 一方、 岐阜薬科大学には、 直面する課題、 乗り越えなければならない課題があります。 これには次のようなものがあると思います。
「岐阜市立」:小さい地方自治体のなかでの存在 
独立法人化
6年制および4+2年制の新しい薬学教育システム
クローズドな環境
  「岐阜市立」、 岐阜市という小さな地方自治体に存在している点が、 いろいろな意味で、 岐阜薬科大学の現在と将来に影響を与えると思います。 岐阜市の小さな、 そして直面している厳しい財政状況が岐阜薬科大学の存続や運営にダイレクトに反映しますので、 それへの対応が岐阜薬科大学のミッション (薬学研究拠点形成、 高度専門職業人養成) そのものを損なわないように、 知恵を絞って工夫することが不可欠と思います。 私は、 岐阜薬科大学が 「岐阜市立」 である点には意義があると考えています。 岐阜薬科大学は、 極めて厳しい不況・社会状況 (たぶん現在より) のなかで、 篤志家と志の高い先達の英断で創立され、 その志が大学のなかに脈々と引き継がれ、 「岐阜の希望、 誇り」 としての存在となっています。 志は今、 我が国の大学にもっとも必要なものと思います。 また、 小さな財政規模は、 岐阜薬科大学の教員・研究者の自立性を鍛え、 外部資金獲得能力の高さにがっています。 このように 「岐阜市立」 であることはメリットが大きいと考えています。
 一方、 現在我が国の大学は極めて厳しい状況下にあり、 本学も例外ではありません。 国立大学はすべて、 また多くの公立大学も法人化の道をとっています。 本学にとっても法人化は対応を考えなければならない重要な課題と考えています。 課題を整理し、 準備を怠らないようにしたいと思います。 どのように法人化を考えるかについて既に法人化した公立大学などのケースを詳しく検証することを始めたいと考えています。
 6年制 (薬学科) 及び4+2年制 (薬科学科) の新しい薬学システムをどう育て、 意味のあるものにして行くかも重要な課題です。 薬学教育の6年制は、 長い間薬学の念願でしたので、 それが実現したことは良かったと考えています。 岐阜薬科大学の薬学科 (6年制) では、 医療と連携した薬剤師教育・研究者教育が目指されています。 これは薬科大学としてオーソドックスな在り方です。 私は、 我が国の薬学は東京大学の医学部のなかで誕生した時から医学との差別化が過度に意識されたため、 物質としての医薬品を教育・研究の対象とすることに焦点化しすぎたのではないかと考えています。 そのために我が国の薬学教育・研究は、 これまで人との関わりの部分について希薄であったと思います。 岐阜薬科大学の薬学科には、 長く希求されてきた人との関わりをきちんとおさえた本来の薬学研究・教育の在り方を探求し、 我が国におけるそのモデルを提示する役割があります。 旧帝大系の総合大学の薬学部や多くの私立大学で、 この目標を明確にしているところは必ずしも多くありません。 この役割の意義はとても大きいと考えています。
 新しくスタートした4年制の薬科学科は研究者・専門的技術者養成に焦点を絞って開設されました。 そのため大学院と連携した実質6年制の新しいスタイルで、 国立総合大学薬学部、 公立の薬科大学のほとんどがこのコースをもっています。 この学科の目的は薬学分野の次世代を担う研究者・専門技術者の育成であり、 薬剤師資格取得にとらわれないカリキュラムが組まれています。 これまでの講座単位、 研究室単位で行われてきた研究者養成ではなく、 学科全体で学部の4年間と大学院2年間を連結して、 システマティックに研究者を養成しようとする点に特徴があります。 この学科には可能性がありますが、 いくつか課題もあります。 まず、 他の研究分野との差別化が必須です。 理学、 工学、 農学、 そして医学の修士大学院などとどのように差別化するのか、 岐阜薬科大学では 「グリーンファーマシー」 の理念がうち立てられていますが、 これを実質化して、 社会一般にわかりやすい形で提示することが求められると思います。 この学科では外国も含めた他の大学や研究機関、 企業などにおいて研究面でのインターン・シップを設けることが重要と思います。 語学・論文作成能力、 ディスカッション能力、 研究資金調達能力 (研究助成の申請) などを鍛え、 力のあるタフな研究者を養成する必要があります。 研究チームを形成し、 それを率いるリーダーシップ能力の育成も必要と思います。 そして出口保証、 この学科を修了した学生の就職先の確保、 特に第一期生がどのような分野で活躍するか、 その実績が鍵になると思います。 そのためには、 我が国において、 大学・研究機関や企業などにおける研究者の流動性を高めることが必要になります。 これは岐阜薬科大学だけでなく、 我が国の大学全体が協力して取り組むべき課題であり、 そのために発言していくことが大切だと考えています。 薬科学科では、 平成29年までは移行措置として、 必要ないくつかの科目を追加履修することで薬剤師免許が取得できます。 その後はどうするのか、 も今から考えねばならない重要な課題です。
 2年後には6年制 (薬学科) 及び4+2年制 (薬科学科) の新しい薬学システムから第一期の学生が巣立ちます。 彼らは新しい薬学の道を切り開いて行かねばなりません。 同窓会の先生方の暖かいご支援を宜しくお願いいたしたいと思います。
 最後に、 大学の閉鎖的環境について触れたいと思います。 岐阜薬科大学のもつローカルな特性、 同窓会中核とした伝統は、 全体としては大きな利点として機能していると思います。 しかし、 この利点は、 大学や同窓会のコミュニティーがクローズドになり、 内向きになると視野が狭くなり、 そこでしか通用しない偏狭で普遍性のない価値観が支配することになります。 そこでは、 岐阜薬科大学にとって最も大切な生き生きとして自由な研究・教育環境が損なわれます。 常に外に向かって開かれた大学を志向する勇気が必要と思います。 また、 実質的な中身をもつ国際交流 (研究面、 教育面、 社会貢献面) の積極的な展開も同じ観点から重要と考えています。 開かれた大学、 国際交流のあり方について長期的戦略をたてたいと考えています。
 岐阜薬科大学は、 現在の厳しい環境・状況をむしろ糧にして、 新しい大学の在り方、 新しい薬学のあり方を示すことのできる大学であると確信しています。 本学に科せられた役割は大きいと考えています。
 学内の先生方、 事務スタッフの協力のもとで、 本学の発展に最善を尽したいと思います。 どうぞよろしくお願い申し上げます。。

九重74号より

岐阜薬科大学

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